デザイン制作の大事なコツとは?専門家の意見をもとにポイントを解説

お話をお伺いした先生:謝敷 宗邦(ジャジキ ムネクニ)先生

現在、インターナショナルデザインアカデミー専門学校(IDA)でグラフィックデザインを担当。

出身校もIDAであり、卒業後雑誌の広告ページの制作会社へ入社。その後IDAからの声がけもあり、現職に至る。アナログ・デジタル両方のデザインを手がけ、ポスターなどの制作からWeb広告のデザインなど、その知見は幅広い。さらにデザインコンセプトについて教える授業も展開している。

謝敷先生

デザイン制作におけるコツやポイントとは?

謝敷先生取材

Q.早速ですがデザインを制作するうえで、重要になるポイントやコツとは何があるのでしょうか?

A.デザイン制作をするうえで最も重要なポイントは「クライアント・ターゲットであるユーザーに寄り添ったデザインを作ること」だと私は考えています。

まずはクライアントに寄り添ったデザインとは何かについてお話ししましょう。クライアントに寄り添ったデザインとは、クライアントが何をゴールとしてデザインを制作して欲しいのか考えてデザインを作るということです。

具体的には、デザインを制作することでクライアントは「集客したいのか」、それとも「購入につなげたいのか」などを考えるということです。

なぜこれらを考える必要があるかというと、デザイン制作で目指すべきゴールが違うとそれに伴ってデザインも大きく変わることが非常に多いためです。
こうした意味でクライアントに寄り添ったデザインを作ることが、まず重要なポイントです。

またユーザーに寄り添ったデザインとは、「デザインをみたユーザーの心に響くか」を考えることです。
製作者がどんなに良いデザインだと思っても、デザインを見たユーザーの心に響く、つまり記憶に残らなければ意味を成しません。これではクライアントの要望に応えることもできないでしょう。

そのため、クライアント要望を考えるとともにユーザーの心に響くデザインを考えること、その両方が重要でしょう。
これができてはじめて「良いデザイン」が作れると思います。

商品が売れやすいデザインと売れにくいデザインの違いとは?

Q.謝敷先生のおっしゃる「良いデザイン」が作れたら、やはりものが売れやすいデザインになるのでしょうか?

A.一概に売れるとは言いづらいですね。私は「売れるデザイン」で共有している特徴は飽きのこないデザインであることだと考えています。

飽きのこないデザインとは、そのデザインを見ただけで商品のメーカーがどこかわかるものです。このようなデザインは商品の認知を定着させてくれるだけでなく、長く使われることで商品の購入が続くという利点があります。

とはいえ、こういったデザインはすぐに作れるものでもなく、商品を作っている会社の認知性なども影響してきたりするため、デザインの力だけで売れるデザインにするのはかなり難しいと思います。

昨今では、上述したような飽きのこないデザインとは別に奇抜なデザインをよく見かける機会があります。このようなデザインはWeb広告で特に多いのではないでしょうか。

奇抜なデザインの方が商品が売れやすいかは断定できませんが、少なくともユーザーの目には留まりやすいため、商品を認知してくれやすくなる可能性が上がると思います。

ただ、こういった奇抜なデザインは見たその瞬間は記憶に残りやすいものの、長く認知させ続けるデザインかは微妙なところです。

このようなことから、「売れるデザイン」とは2種類あると思います。
1つは「売れ続ける」、飽きのこないデザイン。もうひとつは「瞬間的に記憶に残り、商品が売れる」奇抜なデザイン。

どちらのデザインが良いかは一概に言えないところですが、売る商品がどのような特徴を持つ商品なのかや、商品をどのように売っていきたいかに合わせてデザインを考えてみると良いのではないでしょうか。

売れ続けるデザインで重要なポイントとは?

謝敷先生取材2

Q.やはり多くの会社が自社商品に対して長く売れ続けて欲しいと考えていると思います。そうなると売れ続けるためのデザインで重要な要素はどのようなものがあるのでしょうか?

A.デザインが重要なことはもちろんですが、商品自体の特性も影響するため難しい質問です。

今までの経験上、会社が商品を作る段階で「どんな商品にしようか」「どんな消費者を想定しているか」などの細かい商品コンセプトをもった商品は長く売れ続けていると思います。

おそらく、その商品のコンセプトがしっかりとしていればそれに伴って、デザインも良いものになるため、長く売れ続けるのでしょう。

こういったことから、長く売れ続けさせるためのデザインとは、どれだけデザインをする商品について深く理解しているか、もっというとどれだけその商品を好きになれるかが重要なポイントだと思います。

加えて、その商品を見たり手に取ったユーザーが何を考えるのかも考えてデザイン制作していくともっと良いのではないでしょうか。

デザインは色を工夫したり、配置を工夫したりすることももちろん重要ですが、何より重要なのは先ほど述べたように「デザインする対象に対してどれだけ理解しているか」です。
こうして作られたデザインがユーザーの心に響くようなデザインであれば、そのデザインした商品は長く売れ続け、デザインも長く使われ続けるものとなるのではないでしょうか。

ただひとくちに「ユーザーの心に響く」といってもかなり難しいでしょう。ユーザーの心情は時代とともに変化していくからです。また社会的風潮なども大きく影響してくるでしょう。

例えば、昨今ではSDGsという言葉をよく耳にすると思います。社会情勢に合わせ、企業はユーザーに対するイメージを変えたりしようとするため、それに伴いデザインも大きく変わっていきます。
こうした意味で社会情勢に合わせたデザインを作ることも重要なのです。

加えて時代に合わせたデザインという考え方もあります。
20〜30年ほど前のデザインはユーザーに考えさせるようなものが主流でした。具体的にはデザインの中に深い意味が隠れていて、その意味がわかってはじめてデザインされた商品や広告の意味が理解できるというものです。

一方、昨今ではデザインをパッとみてその意味がすぐに理解できるというものが増えてきているように思います。これはまさに時代が変化し、それに合わせてデザインも変化しているといえるのではないでしょうか。

これから先の時代、デザインがどのように変化していくのか予想するのは困難ですが、常に最先端の流行を抑え、それに合わせたデザインをすることもとても重要だと思います。

話がふくらんでしまいましたが、まとめると売れ続けるためのデザインを作るために重要なのは「商品を深く理解していること」「ターゲットであるユーザーを理解していること」「社会や時代に合わせたデザインをすること」、これら3つだと思います。

デザインを学ぶコツとは?

Q.ありがとうございます。お話を聞いたところ、デザイン制作にはより多くのデザインについての知見が必要になるかと思いますが、謝敷先生はどのように学んできたのでしょうか?

A.ひとつはより多くのデザインをみて学ぶことですね。デザインは作っている人によって同じコンセプトでも大きく変わります。

現在IDAで学生たちにデザインを教えていますが、高校までの出身地によって色使いなどが全然違うので、「そんなアイデアがあったか!」と驚かされることが多々あります。
このような経験は自分のデザイン制作でも活かされてくるものだと思うので、いろんな人のデザインをみることがとても重要だと思います。

また違う国のデザインをみることもおすすめです。国が違えばその国に住む人の感性も違ってくるため、デザインも日本で見るものとは全く違ったものになることが多いです。

例えば私が今現在住んでいる沖縄では台湾が近く、時たま台湾で使われているデザインを目にすることがあります。
それを見るとやはり色使いや配置に至るまで全く違ったもので面白いですね。このような要素を自分のデザイン制作で活かせないか考え、糧としております。

なるべく多くのデザインを見て、その要素を自分にいかに取り込むことができるかがデザイン制作でとても重要なことだと思います。

最後に

謝敷先生写真3

さまざまなことを教えてくださりありがとうございました。最後にデザイン制作に携わりたいと考えている方々にメッセージをお願いします。

デザインを作るということは非常に応用の効くスキルだと私は考えています。
というのも、何をするにしてもどんな時代でも、相手にイメージをより鮮明に湧かせるためには「デザイン」をすることが最も手っ取り早いためです。

つまりデザイン制作ができるということは、生きていくうえで非常に応用が効くということです。それは働いていても、プライベートで会話していても必要となる瞬間は必ずといって良いほどあるでしょう。

それだけデザインを作ることは重要で面白いものなのです。今後もデザインは時代とともに大きく変わっていき、常々変化していく面白いものなので、日常の何気ない看板やポスターでも少し立ち止まって見ると新しい発見があるかもしれません。

デザインに興味のある方が増えていってくれるととても嬉しいです。
また私の所属するIDAでも学生を募集中です。沖縄でデザインについて学びたいと考えている方はきてくれると大変嬉しいです。

謝敷先生、貴重なお話ありがとうございました。



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